第18回 「ご機嫌に」働く

福留園子(高知工科大学)

本学では、教育に関連した様々な定期刊行物を管理職に回覧している。「朝読書」として業務が始まる前に読むこともあれば、コロナ下、一人で黙食しながら読むこともある。回覧を止めてしまうのは申し訳ないのでパスすることもあれば、じっくり読みたくて休日に読むこともある。

おそらく皆がそんな感じなので、タイムリーな情報源にはなっていないのだが、様々な意見に触れ「なるほど」と思ったり、時には読むのを止めて深く考えたりもする。

最近読んだ「文部科学教育通信」(株式会社ジアース教育新社)のとある記事に、イソップ寓話「3人のレンガ職人」が引用されていた。「ん? 最近同じ話をどこかで聞いたな」となかなか呼び覚ませない記憶をたどると、ドラマ「イチケイのカラス」に出てきていたのを思い出した。

うん十年の人生において、このイソップ寓話に接したのは記憶にある限りこの2回なのであるが、その2回が至近であることに驚いた。そういえば、「ドッペルゲンガー」という言葉も、人生において2回ぐらいしか聞いたことがないのに、その2回が同じ日で驚いたことがあった。

それはさておき、「文部科学教育通信」の記事には、自大学の存在理由、使命を徹底的に考えぬくことの重要性、「本当にそうなりたい」と心から思える、自分の中から出てきた信念がないと目標に向かって走りぬくことはできないということ、使命のために動くとき、人は自分たちの損得や都合は考えない、辛くても自らの意思で全力を尽くせる、といったことが書かかれていた。

「レンガを積む」という与えられた役割をこなす、「家族を養う」ために働く、「完成した大聖堂に人が集まり多くの人が救われる」その未来に関わる使命を感じながら働く。「3人のレンガ職人」の寓話は、3人目の職人になり、使命のため、仕事への誇りをもって働くことを礼賛するものであろう。

振り返って自分のことを考えたとき、いつも3人目の職人ではないと思う。なぜ今頑張れるのか、何のために頑張るのか。長い職業人生には成長や波があり、ただ黙々と役割をこなす時期もあれば、「生活のため」と割り切って頭の整理をすることもある。いつもぶれず、3人目の職人の視点で仕事に取り組み、同様に周囲を鼓舞してくれる人が周囲にいることは幸運である。

せめて自分も、自分が依って立つ使命を自分なりに考え、3人目の職人さながら、少しでも幸福な次世代につなげる役割を自分なりに果たすことで、自分への誇りを感じていたい。

大学職員になったばかりの頃、長い時間を一緒に過ごしたある先生が、いつも私を見ると「ご機嫌ですか」と話しかけてくれていた。「ご機嫌に働く」というのは、そういうことかなと、最近思っている。

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