鈴木 洋(芝浦工業大学)
2020年から始まったコロナ禍は世界中の大学と学生に大きな影響をあたえました。
突然始まったオンラインでの遠隔授業、会議や学会等もオンラインでの開催になるなど激変したといっても過言ではないでしょう。さらに、コロナ禍が長期化する中、徐々に登校が可能になった事でハイブリッド、ハイフレックス形式での授業も行われるようになりました。各大学で様々な工夫で乗り切ってきたと思います。今回は、自身の振り返りも込めて、本学での工夫を少し具体的に反省点や今後にむけた展望なども書いてみたいと思います。私の大学でメインに使われているのはZoomですが、他のオンライン会議サービスでもおおむね同じだと思われます。
オンラインで重要なのは「きれいな音声」
最近、殆どの会議や打合せはZoomで行われています。この2年の経験から、いかに「きれいな音声」を配信するか?が重要ということが身に沁みました。
例えば、会議参加者の一人が、酷い音声で配信すると、参加している全ての人の耳にはそれが届き続け、大きなストレスになり、場合によっては会議どころではなくなってしまいます。
殆どのパターンでは、主に周囲の雑音を拾ってしまうマイクに問題があります。しかもこのパターンでは、話している人は自分の音声が酷い音声で参加者の耳に入っているとは気づかない場合が殆どです。
本学では、2020年4月の時点で、ノイズキャンセリング機能を持ったマイク付きのヘッドセットを、まずは学事系の管理職に配りました。機種は、Plantronics社のBlackwire C5210(片耳)でした。これは2018年の3月に別の用途用に複数購入していたものでしたが、周囲がざわついてる事務室の自席においても、殆ど周りの音を拾わずに、自身の声のみをきれいに届けてくれました。
後から思えば、最初にほとんど全ての学事系管理職に配ったのは正解で、その後、それぞれの部署の職員用に購入する場合も、この点を重視してくれるようになったように思います。ただ、この機種のヘッドセットはコロナ禍では価格が暴騰し、なかなか買えなくなってしまいました。そこで自部署の職員用にはゼンハイザー(Sennheiser)社のPC8 USB(両耳)を全員分購入しました。
右:PC8 USB(両耳) 左: C5210(片耳)
色々なヘッドセットを試すうちに、実は、私自身は周囲の音(雑音)と会議の音が混じると、会議の音を聞き取りづらく、集中できない事に気づきました。両耳タイプだと会議に没入できます。周りの職員に聞くと反応は様々で、片耳のほうが職場での音に反応できてよいという人もいました。もし、選択の余地があるのなら、個々の職員の聞こえの特性にあったヘッドセットをチョイスできるとよいと思います。(尚、Plantronics社のBlackwireシリーズには、両耳タイプのC5220、さらに、それぞれUSB type Cのモデルも存在します)
それから些細なことですが、もし、オンライン会議中に同僚の音声が気になった場合は、お互いに言い合えるような雰囲気づくりも大切なことです。会議終了後でも構わないですし、プライベートチャットでも構わないので指摘してあげましょう。指摘された方もそれに感謝し、改善するよう心がけます。当初はなかなか言い出せなかったりもしましたが、言い合えるとどんどん「きれいな音声」での会議になります。
教室や会議室の音声
教室や会議室は、通常、マイクやPCの音声を室内のスピーカーから拡声して出力するようになっていると思います。この音声を、zoomで配信するPCに直接入力できるようになっていない場合、かなり厳しいです。無理やりPCの内蔵マイクで室内の音を拾って配信したりするのですが、よほど条件が整っていないと「きれいな音声」にならず、参加者にストレスを与えることになりかねません。実際にクレームを受ける事もありました。
幸い、本学の全ての教室には、教師卓上に教室内の音声出力(ライン出力端子)がありました。元々、先生が自分の授業を録音したり、聴覚障害学生がUDトーク(スマホで音声を文字化するためのソフト)に使うためのものでしたが、オンライン授業が決まってすぐに、この音声出力(ライン出力端子)を、教師卓内のPCに直接入力しました。最近のPCであれば、マイク入力とライン入力をWindowsで切り替え出来ます。
オンライン授業が開始され、初めてのオンライン授業配信に不安が大きかった先生方も、取り合えず教室まで来て、いつものように教室のマイクを使って授業を行えば「きれいな音声」で授業を行うことができました。不要不急の外出が躊躇われる状況でしたが、多くの先生は新たなスタイルでの授業に懸命に取り組み、職員もこれをサポートする要員として一緒に立ち向かったことを覚えています。

教師卓上の音声出力端子(左下のLEDはCO2濃度)
一方、マイク設備しかない会議室では(もしかすると多くの大学ではこのパターンかもしれません)、配信用のPCも持ち込みで、PCの音声出力と音声入力を会議室に接続しようがない場合がほとんどでした。大学では、対面授業が徐々に再開され、会議も一部対面になったのですが、実はこれは完全対面というよりハイフレックス形式(対面とリモートを同時に行う)となり、如何にして、PCの音声出力を会議室のスピーカーから流し、また、会議室のマイクを「きれいな音声」で、PCの音声入力とするかが課題となりました。実際、今年の春の新入教職員研修は3年ぶりに対面での実施となったのですが、一部の参加者がオンラインとなり、予定していた研修会場でPCと接続できず、直前で大慌てで対応しました。
恐らく、コロナ禍が去っても、今後はこのようなハイフレックス形式での会議や授業は、ごく一般的なものになっていくように思います。
会議室によっては、音声出力(ライン出力)や音声入力(ライン入力)を、前述の研修会場のように、どうにか引っ張り出せたのですが、どうにもならないところもありました。
会議室の改修が可能であれば、最低限、何とかこれらをを適切な場所にだすようにしておくとよいと思います。Zoomが前提であれば、Zoom内蔵のエコーキャンセラーでとりあえずは運用できると思います。
もし、機材の入れ替えもできるのであれば、配信用のPCを接続可能にしておくとともに、エコーキャンセルを考慮した音響機器を、仕様として入れておくべきかと思います。本学でも、この夏休み期間中を利用して順次そのような設備入れ替えや改修を行っているところです。
まだまだ感染者は多い状況ですが、コロナ禍の初めの緊急事態宣言の際、当時の学長が教職員に向け「大変困難な状況だが、逆に考え、新しいことをどんどんやっていくチャンスと考えよう」と言われました。コロナ禍で得た知見で、あらたなステージに進んでいけるとよいなあ、と思っています。
まずは、より「きれいな音声」で、ストレスのない授業や会議を実践するヒントになれば幸いです。