第41回 フェアレディZに乗って
𠮷田 光太郎(熊本学園大学)
1.コロナ禍にて
コロナ禍のために、他大学の皆さんとの交流の機会が著しく制限された時期が2年余り続いていたけれど、ようやくその機会も再開されつつあるようだ。
頻繁に熊本県外へ出かけていた生活も、この2年余りは熊本の盆地の中で過ごす日々だった。人とのつながりを県外にも多く持つ人たちにとっては、寂しく残念な日々。私もその一人のつもりだけれど、そんな日々の慰めに「フェアレディZを(中古で)買おう!」と唐突に決意してしまった。
2.フェアレディZ
日産自動車を代表するフラグシップモデルで、日本を代表するスポーツカー。十余年前の私が20代後半の頃、日産のシルビア(S15)に乗っていた。いつかZに乗りたいと憧れていたけれど、現実的ではないなとも思っていた。
私のZ(Z34)は2013年式6速マニュアル。総排気量約3700cc・336馬力と公道では明らかに不必要なパワー、2人乗り、狭いラゲッジスペースという実用性の低さ。いかにも趣味の車。しかしひたすらカッコいい。そしてなんだかセクシー。
ただでさえ、マニュアル車には、オートマチック車にはない“自分で車を操る”感がある。ハンドルやクラッチ、シフトレバーなど両手足で操作し、エンジンの回転数やギアを自分でコントロールする。車との一体感が生まれる感覚、それがZなら私にとって最高だ。
コロナ禍で県外への移動は自粛ムード。ドライブの目的地も限られがちになる。そこで、『道の駅スタンプラリー』なる企画があることを知る。スタンプブック(360円)に各地の道の駅にある丸いスタンプを押していく。スタンプを集めたら表彰されたり商品がもらえたりする、素晴らしい国家的事業(?)。
マニュアルのハイパワー車を長時間運転するのは多少気を遣うし疲れるところもあるけれど、安全に運転できる範囲で巡り、スタンプを押す。たまに頑張っていくつもスタンプを押し、「こんなにたくさん走った」と満足感を得る。スピード出すのは怖いので、本当、安全運転で。そのスペックを十分発揮する機会もなく、Zはこう思っているかもしれない。「アタシの力はこんなもんじゃないわよ」と。
3.大学職員として
「走る車の中にいると落ち着く性分でね。考えがよくまとまるんですよ。走ることで自らは限りなく静止に近付き、世界が動き始める」。好きなアニメのとあるセリフ。私も運転しながら、大学職員としての自分について考えることもある。
20代のころの私は、目の前の仕事が楽しいだけの日々を過ごしていた。30歳を過ぎ、『大学職員としての軸』のようなもの持つ必要があるのではという想いが飽和した結果、大学院へ入学した。働きながらの修士論文執筆は苦労した。だからこそ、恩師はもちろん、励まし合った仲間とも今でもそのつながりは続いている。それ以来、外へ出て様々な人と交流することが大切だとも感じた。
その後、日本私立学校振興・共済事業団へ出向した。新しい業務や人間関係の中で戸惑いも多く、難しく感じることも多かったが、『飲みニケーション』を武器に様々な人達と出会い、こちらも今でも盛んな交流が続く。そしてJUAMでは、熊本地震の対応経験の発表などを行ってきたことが、大学防災・減災教育研究グループ設立のお誘いにもつながった。
私にはエネルギーを要することでもあったけれど、出来る範囲で行動してきた。たまに頑張って新しいコミュニティへ飛び込み「こんなに素晴らしい出会いを得た」と充実感を得る。『大学職員としての軸』とやらは、自分で学ぶだけではなく、人々との交流し、出会ってきた仲間と励まし合い、時には議論を通じて出来ていくものだろう。
4.目的と目標
目的とは『実現しようと目指す事柄』、目標とは『実現・達成を目指す水準』なのだそうだ。目的は『ゴールそのもの=長期的な視点』、目標は『目的到達までの過程に立てられる指標=短期的な視点』ということらしい。
道の駅は「なんでこんなところに作ったんだ・・・」という場所にあることもある。そんなとき、スタンプを押すことが目的なら逆に諦めるのかもしれない。しかし私の場合、目的はZでのドライブ、スタンプは目標だからこそ押しに行く。
一方で、大学院や出向先では、修士や中央行政の知見を得るために頑張っていた。しかしそれは目的だったのだろうか。あらためて考えると、そこで紡いだ「人とのつながり」、それが目的であったようにも思う。仲間がいなければ修論は挫折していたかもしれないし、出向先では引きこもりになっていたかもしれない。当時は目的と思っていたことは目標であり、目的はそのプロセスにあった「人とのつながり」だったのではないか。
スタンプを押すことに執心して、Zの運転や車窓からの眺めを楽しむことを忘れてはいけないのだろう。withコロナの時代へと移行しつつある中、JUAMをはじめ、人とのつながりの場が再び活気を取り戻すのが本当に楽しみだ。
