第57回 流されて大学職員、波に乗る
芳中 宗一郎(大阪産業大学)
「どうして大学職員になったんですか?」
大学職員の方は、一度は尋ねられたことがあるのではないでしょうか。
大学職員になって9年の私でも、何度か経験があったように思います。
私は現在、学長企画室で勤務しており、自己点検・評価、認証評価対応、教学マネジメント等に携わっています。またJUAMには、大学改革研究会の代表(2024年3月現在)として関わっています。
今では所属機関に留まらず活動させてもらえており大学職員を謳歌していますが、積極的な理由から大学職員になったわけではない私は、冒頭のように聞かれるといつもどう説明しようか迷います。
私の高校卒業までは、目先の受験勉強が全てであり、将来についてなど特に考えたこともなく、大学進学についても理系科目の方が得意という理由で何となく理系学部に進学しました。
そして大学入学後、受験がゴールだった私は、敷かれたレールから見事に解き放たれました。
友人や後輩とのハウスシェア、接客アルバイト、バックパッカーや国内旅行、登山にダイビング、コミックマーケットサークル参加、軽音楽サークルでコスプレライブ、、、目の前の楽しそうなことや面白そうなことに流され、気がつけば大学での学びの優先度は水底へ沈み、結果的には3年間留年することとなりました。
今振り返ると、私にとって必要で貴重な時間だったと感じますが、当時、今だけを生きていていつ卒業できるかもわからなかった私には、卒業後や将来のこと、就職活動についてなど考える機会がありませんでした。
ところが、入学7年目にして予期せず最終学年に進級できてしまった私は、急に1年後に社会に放り出されることとなり、就職について考えなければならない現実に直面しました。
しかし、私はここでも自己内省することはなく、卒業したらとりあえず働くものという一般常識に従って、遅れてスタートした就職活動でもフェアに参加できる業界を何となく探し始めました。
そこで見つけたのが、大学職員という職業でした。
熱心に大学に通っていなかった私は大学職員と接した機会がほぼなく、その存在について考えたこともありませんでした。
業界研究もせず、建学の精神という言葉も知らず、何となく募集が出たところに応募していた私でしたが、結果的には幸運にも今の職場に拾っていただき、大学職員として働く場を得ることができました。
大学職員になって教務課に配属されたものの、始めはたまに業務中に寝落ちするような体たらくでした。
転機になったのは、大学職員4年目に職場の後輩に誘われて何となくプライベートで参加した学外研修でした。
そこで初めて、業務ではない、普段の業務とは直接関連がない話を、講師である他大学職員の方々から伺うとともに、様々な背景・経験と想いを持って大学職員として働く方々の存在を知り、大学職員としてのキャリアを意識することとなりました。
そしてありがたいことに、その研修をコーディネートされていた方が気にかけてくださり、JUAMや研修等について様々ご紹介、お声掛けくださいました。
そこでお薦めいただいた研修に参加すると、また新たな方に繋いでくださったり、別の方が気にかけてくださったりし、そのような流れの中で、現在活動している大学改革研究会やその他コミュニティにもお誘いいただきました。
JUAMや大学改革研究会を始めとする所属機関以外での活動では、日常業務や所属機関での活動だけではなかなか得られない経験や研鑽を積むことが出来ていると感じます。
また、業務上の立場に縛られない関係性であり同じ業界で進研に取り組む仲間の存在は、私にとって時に大きな励みになり、業務のモチベーション向上にも繋がっていると感じます。
そして、大きく変わったこととして、今では「大学職員という仕事が好きだ」とはっきり言えるようになりました。
知らないものや分からないものに対して「好き」という感情を持つことは、あまりないかと思います。
働き始めた頃は、学生の問題を解決したり業務上の自己実現によって、何となく局所的なやりがいを感じている程度で、大学職員という仕事に対して何か感じたことはありませんでした。
それが、これまでお話ししたような機会を通して、大学職員業務や教育業界、時に社会全体についてより高い解像度で捉えられるようになったことで、以前より自分の業務内容や役割の意義を意識できるようになり、大学職員という仕事に本質的なやりがいを感じるようになりましたし、「好き」だと思えるようになりました。
こうして振り返ると、私は流されて流されてこれまで生きてきたことを実感します。
その上で、私を新たなところへ流してくださった職場、後輩や諸先輩方、仲間には、あらためて感謝するところです。
現在は3人の子供がまだ小さいため家庭中心の生活を送っていますが、時に不義理を働いてしまいつつも、それでも様々な方々と繋がりながら日々を過ごせているのは、ひとえに流れを作ってくださった方々のおかげだと感じます。
今後は、これまで受けたご恩を次に繋げるため、誰かが流れに乗るお手伝いができればと考えています。
また、このJUAM会員リレーコラムでは、私とは違って自ら流れを作り出す、自らの力で進むことのできる先輩方が、そこから見える景色を共有してくださっています。
このリレーコラムが、時に誰かが乗る流れとなりながら、大学職員のバトンとして紡がれていくことを願っています。
ダイビングには、ドリフトダイビングというものがあります。
潮流に身を任せて流されるダイビングのことで、限られた潜水時間で自ら泳ぐよりも疲れずに広範囲の海の景色を楽しむことができます。
今後も流され系大学職員として、偶然の流れに感謝し、ドリフトダイビングを楽しみながら、目の前の波を乗りこなせるよう精進したいと思います。